ACCIDENTS『HUMAN ZOO』(その1)
2008年 03月 24日
[徳間ジャパン/28JAL-3006] (1985.5.25) *LP
Side A
①When I Was Young
(Burdon - Briggs - Weider - Jenkins - McCulloch)
②Lazy Girl Crazy Love (w: 原島宏和 m: 穴井仁吉)
③雨のメインストリート (w: 原島宏和 m: 樋口博)
④Baby Blue (w: 原島宏和 m: 後藤昌彦)
⑤Human Zoo (w/m: 原島宏和)
Side B
①Night Time (w: 原島宏和 m: 後藤昌彦)
②Liar (w: 原島宏和 m: 樋口博)
③I Wanna Be A Star (w: 原島宏和 m: 後藤昌彦)
④Cryin' Heart (w: 原島宏和 m: 樋口博)
⑤Hold Me Tight (w: 原島宏和 m: 樋口博)
※原島宏和; vo, harp/後藤昌彦; g, key/樋口博; g/柴田正彦; b/宮本秀二; dr, per
with
安藤広一; key/高橋佐代子; back vo
※producer: 柏木省三
※engeneer: 重藤 Brothers
※recording studio: 淵上レコーディング・スタジオ
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アニマルズのカヴァーA①で始まるアクシデンツのメジャー・デビュー作。この原曲にかなり忠実なアレンジで演奏されるオープニングが、この作品におけるレコーディング・アーティストとしてのアクシデンツの立ち位置を端的にあらわしている。
1984年、アクシデンツは2枚の音源を残している(注1)。12"「Night Time」。そして、福岡地方で活動するバンドによるライブ・イベントの模様を収めた『JUMPING JAM -REBEL STREET Ⅲ』である。そこで聴くことができるアクシデンツを1言でまとめるとすれば、おおらかで骨太なビート・バンドであろう(注2)。とくに、『JUMPING JAM』でのアクシデンツは福岡ビート・シーンのシンボルだったと言ってよい(注3)。
こうした血筋を持つアクシデンツが、メジャー・デビュー作のオープニングにアニマルズを選んだところに彼らの意図が見え隠れしている。カヴァー(あるいはカヴァーに限りなく近いオリジナル)が福岡のビート・バンドの伝統であることは、ここであらためて言うまでもない。その流儀をアクシデンツも継承しているわけだ。
しかし、その選曲がアニマルズであったことに、アクシデンツの立ち位置の変化もうかがえる。これ以上もったいぶってもしかたがないので、ここで種を明かそう。最初に「アニマルズ」とだけ言ったのは「Eric Burdon & The Animals」のことなのである。この時期のアニマルズに、ブリティッシュ・インヴェンションのバンドの中でもっとも黒いビートを響かせていたオリジナル・アニマルズの面影はない。かわりに原曲の方で聴こえてくるのは、ひたすらヘヴィーでサイケデリックな音像である(注4)。そうした原曲のイメージに忠実な演奏をオープニングに置いたのである。
「I don't take a Drug / I am a Drug」。これは『HUMAN ZOO』の帯の売り文句だが、60年代のサイケ・バンドを思わせるジャケット・デザインといい、レコーディング・アーティストとしてのアクシデンツが、その軸足を「サイケデリック」に置いていたことは明らかである。このため、初期のアクシデンツは『Rockin' On』誌で、ペイズリー・アンダーグラウンド(以下、PU)に対する日本からの返答などと評価されていた(注5)。また、原島氏が『Rockin' On』のインタビューでPU一派のバンドからの影響を認める発言をしていた(注6)。
しかし、文字通りアンダーグラウンドであったPUを視野に捉えていた原島氏(と他のメンバーたち)の感度の良さも見逃せないところではあるが、当館がやはり重要視したいのは中期ルースターズからの直接的な反響である。それはプロデューサーの選択や、安藤広一氏をゲストに迎えている点にはっきりと表れているわけだが、実際、この『HUMAN ZOO』には『DIS.』から『φ』にいたるルースターズを思わせる音がそこかしこで鳴っている。
こうした意味で、レコーディング・アーティストとしての初期アクシデンツは中期ルースターズの傍らに置いてあげるのが妥当な気がする。矛盾した表現だが、少し遅れてやって来た随走者(注7)。もちろん、それだけがアクシデンツの魅力ではないのだが、『HUMAN ZOO』に愛情のまなざしを向ける際の1つのポイントにはなるはずだ。
さて、ここまでアルバムの方向性だけを書いてきたのと「注」の量がふくらんでしまったので、各収録曲については日を改めてまとめたい。
(注1)この時は、ベースに穴井仁吉、ドラムに宮本秀二という編成である。
(注2)「Night Time」は未聴。ただし、DVD『JUMPING JAM 1986』(2004)のバックで使用されている音源が「Night Time」のものだと思われる。
(注3)『JUMPING JAM』は、徳間ジャパンからリリースされているが、アクシデンツを「福岡ビート・シーン」の中心バンドとして強く押し出す姿勢があちこちに見え、翌年の徳間ジャパンからのデビューの布石となっている。具体的には以下の通り。
①ジャケットで、黄色いジャケットを着てジャンプしているのは原島氏
(ちなみに穴井氏と思われる人物も後ろに写っている)
②オープニングはアクシデンツの「Break On Through」
③他バンドは1曲ずつの収録だが、アクシデンツはもう1曲
(「HOLD ME TIGHT」)
④帯にデカデカと「from 博多」
⑤当時のチラシの売り文句が「CATCH THIS BEAT」
……etc.
(注4)原曲は、1967年にシングル・リリースされている。現在、このヴァージョンを手軽に聴くことができるアルバムは、『The Best of Eric Burdon & the Animals, 1966-1968』というベスト盤であろう。輸入盤や中古盤であれば、比較的入手しやすい。
(注5)PUは、1982年頃からアメリカ西海岸のインディー・バンドの間で起こったサイケデリック・ムーヴメント。 ↓ のブログが参考になった。
「子供騙しの猿仕事日記 」
(注6)『Rockin' On』については、現在手もとにないため、記憶にたよっている。
(注7)『HUMAN ZOO』リリースの時点で中期ルースターズはすでに幕を閉じていた。
※『HUMAN ZOO』のジャケット画像は、1990年のCD盤のもので、宣伝相@Sister Greyさんから提供していただきました。ありがとうございました。
(涛々)